2023年09月21日 15:10

東京理科大学の安藤格士准教授は、水系の分子シミュレーションモデルとして有望視されているOPCとOPC3を用いて、さまざまな温度におけるせん断粘度の評価を実施。広く用いられている他の水モデルよりも優れているという結果を報告した。

水は生物系や化学系に遍在するユニークなかつ重要な存在であり、これまでにバルク水のさまざまな特性を再現するための多くのモデルが開発されてきた。それぞれのモデルの特性を踏まえた上で、目的に合ったモデルを選択することが求められる。OPCおよびOPC3は、性能が高いことから近年注目されているモデルだが、これまで粘性に関する報告はなかった。

そこで安藤准教授は、OPCとOPC3の性能を評価するため、Green-Kubo公式を用いて273 Kから373 Kの範囲のさまざまな温度でせん断粘度を計算し、実験結果と比較。その結果、いずれの温度においても両モデルは非常に近い値を示し、310 K以上では実験結果とよく一致した。310 K未満では両モデルはせん断粘度を過小評価し、273 Kでは実験値よりも20%、298 Kでは10%低い値を示した。

このような限界はあるものの、本結果およびこれまでの研究報告を合わせて考えると、OPCとOPC3は水さまざまな特性を考慮した最も優れたモデルの一つであると結論付けることができる。本研究成果は、幅広い分野で求められている水系の分子シミュレーションを行う際の基礎的なデータとなる。