2023年02月16日 12:36

豊橋市図書館で昭和30年代から所蔵していた「松平記」が、4代吉田藩主・松平忠房(まつだいらただふさ、1619~1700)の直筆の写本であることが確認された。松平忠房は、「大日本史」を編纂した水戸徳川家の徳川光圀と並ぶ歴史通として知られる人物。多くの書物を収集するとともに、自らも歴史書の編纂を行った。

江戸時代に記された徳川家康や徳川家、松平家に係る歴史をまとめた書物は、家康を神格化したり、筆者の家柄や立場を有利にするため、徳川家との近しい間柄を主張するなど脚色されたものが多い。また書物の写本を作成する過程でも同様に脚色を繰り返し、事実がわからなくなってしまっている。

「松平記」は、家康の祖父・清康の暗殺から、家康の妻・築山殿の自害までのさまざまな事件を年代順にまとめた資料。同種の書物の中でも比較的事実に近いことが書かれている資料として、歴史研究の中でも多く使用されてきた。全国に30点程度の写本が残っていることが確認されているがオリジナルの原本は見つかっておらず、年代が確実にわかる最古の写本は、1688年に作成されたものとされている。

今回確認された忠房直筆の写本は、忠房が歴史研究を行っていた1650~70年頃に記されたものと考えられ、数ある写本の中でも最古級ものと推定される。現存する最古級のものであるにも関わらず、他の写本には見られない表現の加筆が多くみられ、各地に残る「松平記」と比較研究していくことで、家康や徳川家、松平家について新たな事実が判明することが期待されている。