2020年02月28日 18:53

順天堂大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学の神谷和作准教授、田島勝利大学院生らの研究チームは、老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした。

研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考え、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察した。その結果、若年期に比べてギャップ結合複合体の構造が著しく崩壊しており、構成成分であるコネキシン26とコネキシン30タンパク質の量も大きく減少していた。

そこで、ギャップ結合複合体の構造を詳細に解析したところ、老化初期の内耳(32週齢)ではこの構造は分断され、2マイクロメートル程度と若年期(5マイクロメートル程度)に比べて大きく減少。さらにタンパク質量を測定すると、老化初期の内耳では若年期の約40%に減少していた。また、ギャップ結合タンパク質の生化学的な特性を調べたところ、老化の影響でギャップ結合は脂質に取り囲まれたり共存するようになるという性質の変化があることが分かった。

研究チームは内耳のギャップ結合を修復するための医薬品や遺伝子治療ベクターの開発を進めている。現在、老人性難聴の根本的治療法や治療薬はないが、将来的には、研究チームが開発中のギャップ結合タンパク質を安定化する薬剤やコネキシンを補充する遺伝子治療の開発によって老人性難聴の予防や聴力の回復が期待できる。