2025年09月02日 15:18

順天堂大学は、大阪大学、北海道大学、国立健康危機管理研究機構、タイ王国マヒドン大学との共同研究により、蚊の唾液にウイルス感染を助ける役割があることを明らかにした。
デングウイルス(DENV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ジカウイルス(ZIKV)、ウエストナイルウイルス(WNV)などの「フラビウイルス」は、蚊などの小さな虫(節足動物)によって人にうつる。病気を防いだり、重症化を避けたりするには、ウイルスの性質や体の中でどう広がるかを詳しく理解することが大切。
本研究では、蚊の唾液に蚊媒介性フラビウイルスの感染を増強する成分があることを、動物モデルで証明。特に蚊の唾液に含まれるTLR2リガンドが、蚊媒介性フラビウイルスの感染を増強することを発見した。また、蚊の唾液に含まれるTLR2リガンドは、好中球を活性化して様々な液性因子を放出し、効率の良いウイルス感染を成立させていることも明らかに。感染部位のTLR2阻害剤の投与は、蚊媒介性フラビウイルスの病原性を著しく低下させることを示し、新規の創薬標的を見出した。
この発見は、単にウイルスの仕組みを明らかにしただけではなく、将来的には、蚊の唾液の働きを抑えることで感染を防ぐ、新しい治療薬やワクチンの開発につながる可能性がある。本研究は、「蚊はただウイルスを運ぶだけの存在ではなく、唾液が感染の行方を大きく左右する」という新たな視点を示し、感染症研究に新しい可能性をもたらすものとなる。