2025年08月27日 11:57

千葉大学の研究グループは、都市部特有の夜間人工光が、昆虫の体のサイズの縮小、睡眠時間の減少、活動リズムの乱れ、寿命の短縮に影響を及ぼすことを明らかにした。

本研究では、関東地方の都市および非都市部に由来するオウトウショウジョウバエの複数系統を用いて、都市部と非都市部の光環境を模した共通圃場実験を実施。夜間人工光に対する反応を詳細に解析した。

その結果、明夜条件下において、非都市系統の生存率は低下し、体が小さくなったり、睡眠のサイクルが乱れたりする傾向があった。一方で、都市系統では明夜条件下ほど生存率が高い傾向があった。また、夜間人工光による活動リズムや体内時計の乱れが少なく、とくにメスにおいてその傾向が顕著だった。

さらに、網羅的な遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)によって、光受容や体内時計に関連する遺伝子群の応答が、都市と非都市の系統で明確に異なることが突き止められた。これは、都市部の集団が、夜間光による撹乱を緩和するための遺伝子制御を発達させることで、都市環境に適応したことを示唆している。

本研究は、光害という現代的な環境ストレスが、生物の成長や生存に悪影響を及ぼすことを実証するとともに、このようなストレスが生物に急速な進化を促していることを実験的に示した貴重な事例。光害が生物多様性に与える影響の評価や、持続可能な都市環境の設計に向けた重要な科学的知見を提供する。本研究成果は、8月11日に国際学術誌 Ecology and Evolution に掲載された。