2022年04月06日 20:00

千葉大学の原孝佳准教授らと広島大学、島根大学、高輝度光科学研究センターの研究グループは、陰イオン交換能を有する層状希土類水酸化物の機能を駆使。水溶媒中で固体ブレンステッド塩基触媒として応用することに成功した。

同研究グループは、化学反応が水中で加速される要因が、触媒の周囲に多量に存在する水分子が層間内の陰イオンと複合体を形成し、ナノサイズの反応空間を特異的に「リフトアップ(拡張)」することであることを世界で初めて突き止めた。さらに、放射光X線を用いてその過程を直接観測した。

「触媒」は、化学反応を促進させる物質のことであり、物質とエネルギーの変換を掌るマエストロの役割を果たす重要なキーマテリアル。効果的な触媒を開発することは、モノづくりをパワフルに先導することができる真のグリーン・イノベーションを達成するためにも重要となる。

本研究により、層状希土類水酸化物を塩基触媒として用いる際、水分子による層空間「リフトアップ」機能を発現させ、反応速度を加速させることに世界で初めて成功した。希土類元素を含む水酸化物あるいは酸化物は、蛍光・リン光材料に応用され、MRI造影剤やドラッグデリバリー試剤としての応用も検討されている将来有望な化合物群。

今回の研究成果は、反応媒体(溶媒)がもたらす構造変化によって、触媒性能を向上させることを可能とした。さらに、希土類水酸化物特有の機能も組み合わせた斬新な触媒の設計指針を確立するうえで大きな一歩になる。