2022年01月19日 19:11

東北大学発スタートアップAZUL Energyらの研究グループは、ホヤ殻中のセルロースナノファイバー(CNF)を炭化すると品質の良い炭素となること。また、廃棄血液中にはヘム鉄や窒素・リンなどの元素が含まれていることに着目。これらを混合・焼成することで、様々なヘテロ元素が導入されたナノサイズの「ナノ血炭」が合成できることを実証。さらに、得られたナノ血炭は、レアメタルを用いた電極触媒に匹敵する性能を示すことを見出した。

日本では、炭に動物の血液をかけて焼成した「血炭」を、日本酒などの漂白剤などとして用いてきた。現代でも、FeN4構造などが導入された炭素は、電極触媒としての応用が期待されている。一方、食用部を除いたホヤ殻は大量の産業廃棄物となり、その処理が問題となっていた。ホヤは唯一セルロースを産生する動物であり、その多くはCNFとして殻に蓄積されている。

これらの背景から研究グループでは、ホヤ殻由来CNFと乾燥血粉を混合して焼成すれば、窒素、リン、FeN4構造を導入したヘテロ元素ドープ炭素が合成できるのではないかと考えた。そこでホヤ殻から抽出したCNFと血粉を様々な比率で混合し、温度を変えて焼成。

CNF由来のナノサイズの炭素構造と血粉由来のヘテロ元素がドープされ、ORR・OERの両方に高い活性を持つ、両性電極触媒「ナノ血炭」の合成法を見出した。本成果は、処理に困っていた産業廃棄物を、燃料電池、水電解システム用電極触媒などへ応用して活用する技術として期待される。