2025年08月21日 12:56

千葉大学と環境リモートセンシング研究センター(CEReS)の研究グループは、大気下層における水蒸気濃度の「水平方向の不均一性 (場所ごとの違い)」が、大気が不安定な時ほど顕著になる傾向を明らかにした。
大気中の水蒸気は、対流活動や降水現象を引き起こす重要な要素であり、数値予報モデルにおける再現性の鍵を握っている。特に、線状降水帯のような集中豪雨をもたらす現象では、地上から約1 km以下の大気層において、暖かく湿った空気の流入が継続的に発生することが知られている。
そのため、この層の水蒸気を正確に観測することは、予測精度向上のために不可欠。しかし、これまで研究に用いられてきた観測手法には制約があり、特に大気下層における水蒸気の水平方向の不均一性を継続的かつ高精度に把握することは困難だった。
同グループでは、国際リモートセンシング観測網「A-SKY」で用いられる多軸差分吸収分光法(A-SKY/MAX-DOAS法)を活用し、6年間の長期連続観測を行った。その結果、大気不安定時に水蒸気の不均一性が顕著となる傾向が明らかになった。
この水蒸気の水平不均一性は、気象庁の高解像度の数値予報モデルでも適切に検出されておらず、本研究成果は豪雨災害の早期警戒や予測精度向上に貢献することが期待される。また、本手法を高層気象観測(ラジオゾンデ)と比較検証したところ、極めて高い観測精度を示すことも実証しており、信頼性の高い新たな水蒸気観測手法としての有効性を示した。