2025年08月19日 12:21

琵琶湖博物館の林竜馬専門学芸員、北海道大学の入野智久准教授による共同研究の成果が国際学術誌で公開された。

本研究では、琵琶湖地域の森の変動と海の関係性を明らかにするため、日本海の大和海盆北部で採取されたKR07-12 PC-07堆積物の花粉化石の分析を行った。その結果、「日本海暗色層」と呼ばれる東アジアモンスーンの温暖化時期には、日本列島の森から約300km離れた日本海まで、多くの花粉が運ばれて堆積していたことが明らかになった。

また温暖化時期の中にも、スギ花粉が優占する時期と、落葉広葉樹花粉が優占する時期が認められ、それぞれの時期には異なったパターンの森と気候が成立していたことが示された。

琵琶湖周辺の森は過去の気候変動の影響を受けて大きくうつり変わってきたことが、陸上堆積物の花粉化石の研究から明らかになってきている。日本周辺での海の環境の変化が雨や雪の降り方を変えてしまうことが、森の変動を生み出す要因の一つと考えられている。

本研究の成果から、温暖化時期には日本海の堆積物の中にも、日本列島の森から運ばれてきた花粉化石がきちんと残されていることがわかった。陸と海の堆積物に記録された花粉化石を調べることで、森と海の変動の新たな関係性が明らかになることが期待できる。本成果は地球惑星科学系の国際英文誌「Progress in Earth and Planetary Science」に掲載された。