2022年03月24日 16:20

田中貴金属工業は、高い分散安定性により高濃度調製可能な「金ナノシェル粒子」を開発した。

金ナノシェル粒子が示す表面プラズモン共鳴は、シェルの厚さが薄いほど入射した光を効率良く吸収できる。従来の市販品と比較しても、本製品は10 nm未満という非常に薄いシェル厚を実現。これにより入射光のエネルギーを効率よく吸収でき、さらに粒子全体の比重が軽くなるため分散安定性にも寄与する。

通常、粒子径数百nmサイズの金ナノ粒子は粒子濃度を高くすると自己凝集し、沈降する。しかし本製品は、粒子表面を適切な保護剤で保護することにより、水およびアルコール等の極性有機溶媒中で安定的に分散させることが可能。保護剤で保護された粒子は20重量%以上に調製可能なため、高濃度の粒子分散液を必要とするプロセスにも用いることができる。また、有機溶剤中に分散させた金ナノシェル分散液は速乾性にも優れるとともに、様々な形状の素材への塗布も可能。

これらの特徴により、本製品は、コロイド結晶、表面増強ラマン散乱、光熱変換材料など可視光から近赤外光領域の光に応答する光学材料としての利用が期待できる。また、高画質を求める液晶に採用される光学ディスプレイや光センシング、プラズモニックナノアンテナ、がん検査などに用いられるバイオセンサーなどの光学機器への応用も期待されている。