2020年04月20日 17:31

春陽堂書店は4月、これまで芥川龍之介賞の候補になった作品の中から傑作を厳選してまとめた、「芥川賞候補傑作選」の刊行を開始した。

第1巻は、賞の創設された1935年から、戦時下での最後の回となった1944年までの候補作から、14作品を精選。太宰治、織田作之助、中島敦などいまも読まれている作家から、一瀬直行、村田孝太郎、埴原一亟といった知られざる作家まで、惜しくも賞を逃した名作・問題作・異色作・意欲作を掘り起こし、珠玉の14作品を精選。様々な文学の形が体験できる一冊となっている。

編者は読売新聞の書評面デスクを経て、現在は同紙編集委員をつとめる鵜飼哲夫さん。芥川賞についての著書もある鵜飼さんによって、「今日では入手が難しい候補作の中から、未知の世界へ冒険に飛び出した新人の清新な短編」が選ばれた。何よりも「いま読んでも面白い」作品が選ばれている。

太宰治、織田作之助の作品は芥川賞の選考の際に読まれた雑誌初出時のもの。他にも、村田孝太郎など、戦後は書籍が刊行されておらず、現在では読むことすら難しくなっていた作品も掲載している。該当作品に対する選考委員の選評も抜粋して掲載することで、当時、どのように評価され、また何が理由で受賞に至らなかったのかも知ることができる。このような編集にもこだわりを持ったシリーズとして、2021年にかけて平成編、昭和編の刊行も予定している。

芥川賞候補傑作選 戦前・戦中編」は本体1800円+税。4月発売。