2025年09月10日 12:28

千葉大学の研究グループは、高脂肪食(HFD)の摂取などの食習慣が脳の神経細胞において、記憶能を低下させる仕組みを明らかにした。
研究グループは、ショウジョウバエに7日間HFDを与え、記憶機能への影響を調べた。その結果、HFDを摂取したハエでは、短期記憶には変化が見られず、中期記憶および長期記憶が低下することが明らかになった。次に、HFDが神経細胞に及ぼす影響を調べたところ、オートファジー活性が低下し、オートファジーで分解されるタンパク質「Ref(2)p」が細胞内に蓄積していることが分かった。
さらに、神経細胞の解析により、HFDを摂取したハエの脳神経細胞ではオートファジーの過程で分解すべきたんぱく質などを包み込む膜構造体「オートファゴソーム」とリソソームの数が増加。一方、オートファゴソームがリソソームと融合した後の構造体である「オートリソソーム」の数には変化がないことが分かった。
本研究により、高脂肪食が神経細胞におけるオートファジーの機能を低下させ、特にオートファゴソームとリソソームの融合過程を抑制することで、中期記憶を低下させることが明らかになった。さらに、オートファジーを活性化することで、記憶低下が回復可能であることも示された。
これらの成果は、食習慣が脳の働きに与える影響を分子レベルで理解するうえで重要な知見であり、今後の研究ではオートファジーの制御を標的とした新たな介入方法の開発が期待される。