2025年08月19日 19:32

理化学研究所(理研)らの共同研究グループは、実験室(ラボ)全体を一つの統合システムと見なし、自らの状態を把握して維持する「Self-maintainability(SeM、セム)という新たな概念と、SeM対応ラボという新たな設計思想を提案した。
近年、生命科学や化学などの実験科学において、ロボットや機器装置が実験操作を行う実験自動化(ラボラトリーオートメーション)が急速に進んでいる。しかし現状では、ロボット用の実験手順を作成したり、試薬や消耗品を適切なタイミングで補充したりするなどの裏方作業(ケア)は相変わらず人間に依存。これらのケアの解決が、完全な自動化ラボの実現に残された最後の課題となっている。
今回提案したSeM対応ラボは、実験手順の作成・資源管理・トラブル対応など、自動実験を行うために人間が行ってきたケアを、ラボ自体が担えるようになることを目指す設計思想。生命科学や化学をはじめとする多様な分野で完全自動化研究を加速させる基盤技術の開発につながると期待される。
SeMを意識した設計により、実験室自身が消耗品補充や装置調整などのケアを自律的に実行できるようにし、研究者を煩雑な管理作業から解放して発想と解析に専念できる環境を整えることができる。また、SeM対応ラボの実現・普及により、創薬では候補化合物の発見サイクルを短縮。再生医療では多能性幹細胞や移植用細胞の長期培養の品質を安定させ、食品・材料開発では多数条件の並列試験時間を短縮できると見込まれる。