2025年08月12日 16:01

米国オハイオ州クリーブランド美術館で長年展示されていたローマ皇帝マルクス・アウレリウスの青銅像が、65年の時を経て故郷・トルコ共和国へ返還された。
この像は西暦2~3世紀に制作されたもの。皇帝を哲学者として描いた極めて稀少な作例として、古代美術史上特別な価値を持っており、アナトリア地方で発見された青銅彫刻の中でも、最も優れた作品の一つとされている。1960年代に違法に発掘され国外へ持ち出された後、複数の所有者を経てクリーブランド美術館が収蔵。長きにわたる粘り強い法的・外交的な努力の末、アメリカ合衆国から返還され、間もなくトルコの首都アンカラで開催される展覧会で一般公開される。
本像の出土地がボウボンであることを初めて明らかにしたのは、トルコ初の女性考古学者ジャーレ・イナン教授による研究だった。この研究成果を基に、2021年からトルコ文化観光省はマンハッタン地区検事局およびHSIと共同で調査を開始。その結果、ルキウス・ウェルス、セプティミウス・セウェルス、カラカラといったローマ皇帝の彫像や胸像など、ボウボン由来の複数の文化財が返還されることとなった。
さらに、長年にわたる科学的分析、記録資料、証言により、このマルクス・アウレリウス像がブーボン遺跡内のセバステイオン構造物に属していたことが裏付けられた。これらの科学的根拠に基づき、マンハッタン地区検事局とHSIはトルコ側の主張を正当と認め、クリーブランド美術館からの像の押収と返還を決定した。