2025年07月17日 16:16

山口大学とドクターズ・マンが共同研究で、透析中の体外循環回路内で水素を直接作用させる、安全でより安価な新技術を確立した。

透析治療は生命維持に必須だが、人工臓器を用いることによる非生理的な性質から、体内で慢性的な炎症や「酸化ストレス」が発生。これが、患者を悩ませる倦怠感や様々な合併症の一因となっていた。この課題に対し、山口大学の研究グループは、有害な活性酸素を選択的に除去する能力を持つ水素に着目、透析治療中に水素を効率的に供給するための全く新しい技術を開発した。

本システムは、水を直接電気分解する従来の方式とは異なり、ドクターズ・マンとの共同研究で独自に開発した「ガス分離中空糸膜」を用いた吸引溶解方式を採用している。従来の加圧溶解方式と比べて気泡を形成しにくいなどの特徴があり、この「飽和水素水道水」から、透析治療の原水となる「水素添加RO水」を作製する。

本システムは、透析用水(RO水)の段階で約1600ppb、そして最終的に患者に使用される透析液においても230ppb~280ppb という安定した高濃度の水素を維持することに成功した。これは十分な抗酸化作用を発揮させる上で重要な成果となる。

研究代表者は「新システムは、独自の吸引溶解方式で高濃度の水素を安定供給し、その作用部位が体外循環回路内に限定されることを動物実験で突き止めた。導入も容易なため、この技術が広く普及し、一人でも多くの患者さんの負担を和らげることを願っています。」とコメントした。