2025年06月20日 15:49

杏林大学、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所は、胃の病原菌であるピロリ菌以外のヘリコバクター属菌(NHPH)の感染率などの実態を解明した。

ヒトの胃の主要な病原細菌であるピロリ菌の感染率は日本では低下しているが、近年H. suisなどのピロリ菌以外のヘリコバクター属菌もヒト胃に感染し、胃マルトリンパ腫や消化性潰瘍の原因となることが分かってきた。しかし診断法が開発されていないことから、NHPHの感染率、感染経路、患者背景、病態、内視鏡像など基本となる情報がほとんどない。そこで本研究グループは、我々が開発した胃液を用いたPCRを用いてNHPHの実態調査を行った。

調査の結果、ヘリコバクター属菌感染なしが56.2%、除菌後が37.7%、ピロリ菌感染率は3.1%、NHPH感染率は3.0%であり、ピロリ菌感染率とNHPH感染率は同程度だった。また、NHPH感染はピロリ感染と同様に全例で胃炎を起こし、ピロリ感染より胃炎の範囲は狭い、という特徴をもつことが分かった。

これによりNHPH感染はわが国で稀ではなく、血清学的診断法(ELISA)がH. suis感染診断法として臨床的に有用であることが示された。

ピロリ菌の感染者が減少している日本では、胃十二指腸関連疾患においてNHPHは重要な病原体となることが予想される。これまでNHPHの診断法は内視鏡下で生検(組織検査)が必要である鏡検法のみだったが、胃液を用いたPCR法や血清ELISA法が今後実用化されることが期待される。