2023年12月25日 15:00

新潮社は12月25日、ポール・オースター「冬の日誌/内面からの報告書」(文庫版)を発売する。本書は2017年に連続刊行した二冊の単行本を合本したもの。

オースターは1947年生まれ、現在は76歳。日本でもとりわけ人気の高いアメリカ文学の巨匠だが、本作は2012年と2013年に刊行された作品。人生の冬にさしかかった自らの精神と肉体を考古学的に掘り起こし、回想録にもかかわらず「君」という二人称によって語ったり、幼い頃に見た映画の筋書きを長々と盛り込んだり。また、最初の妻へあてたラブレターをそのまま使うなど、この著者らしい企みに満ちている。同時に親しみやすく、誰にとってもこのような物語があったと思える温かなメモワールともなっている。

ニューヨーク・タイムズでは「完璧な宝石のように美しく切り出された回想録」、ワシントン・ポストでは「深く美しい本」、またパブリッシャーズ・ウィークリーは「静かに胸を打つ」と、全米各紙が絶賛。

訳者は柴田元幸(しばた・もとゆき)さん。訳者あとがきでは「ポール・オースターの愛読者にとっては、なるほどこういうものを食べて育ってこんな場所に住んでいた人がああいう本を書くわけか、という発見も楽しいだろうが、かりにオースター作品をまったく知らなくても、人が自分の過去を発掘する営みの中身濃き実例として、大いに刺激を受けられる一冊ではないかと思う。」と語る。価格1155円(税込)。電子書籍も同日配信開始。