2023年03月31日 16:13

花王は、芳香族化合物である没食子酸(ぼっしょくしさん)及び、4-アミノ-3-ヒドロキシ安息香酸を、トウモロコシやサトウキビ由来のグルコースから微生物を用いて製造した。
現在、化学原料の多くは、石油からの化学合成や植物からの抽出によって製造されているが、新しい製造プロセスとして注目されているのが、発酵生産。微生物が体内で物質を作り出す性質を利用して特定の成分を作らせる発酵生産は、従来の製造プロセスよりもCO2排出量が一般的に少ないことから、環境負荷の軽減が可能な製造方法と考えられている。しかし、化学原料のひとつである芳香族化合物は、産業的な利用価値が高いにも関わらず、微生物内での代謝経路のステップ数が多く複雑。そのため、発酵生産での商業的な製造の例は限られていた。
このたび花王は、グルコースから没食子酸を発酵生産する技術に注目し、実用化を見据えた生産技術の開発をめざした。コリネ型細菌に複数の没食子酸生産経路を導入し、かつ副産物生産の代謝経路を抑制することに成功。コリネ型細菌を用いて、グルコースから没食子酸を高効率に発酵生産する技術を確立した。
開発したコリネ型細菌は、グルコースから没食子酸への変換能力が元のコリネ型細菌よりも1.8倍程度増加することから、製造コストの低減が可能。この技術を応用すれば、安定的かつ安価に没食子酸を供給できる新しいサプライチェーンの構築が可能であると考えられ、今後は実用化に向けてのさらなる技術開発を進めていく。