2022年07月13日 15:51

量研量子エネルギー部門六ヶ所研究所と、マイクロ波化学は、レアメタルの新たな省エネ精製技術として化学処理とマイクロ波加熱を組み合わせた実証試験を実施。リチウム鉱山で実際に採鉱された約100グラムのリチウム鉱石を溶解させることに成功した。
具体的には、プラント設計に用いる工学データの取得のため、これまでに適用できていたグラム規模を扱うラボ装置から、100グラム規模を取り扱うMWCCのマイクロ波ベンチ装置に約100倍スケールアップ。効率よくマイクロ波が照射できるようにさらに工夫して、溶解実証試験を行った。その結果、塩基試薬による常圧下での300℃のマイクロ波加熱処理と常圧・室温下での酸溶解により、全溶解させることに成功。従来技術で必要だった1000℃以上での反応を、本技術により300℃という非常に低い温度で進めることができた。
本結果はリチウム以外のレアメタル鉱物の溶解にも反映できる成果。設備投資(CAPEX)、運用コスト(OPEX)及びCO2排出量を、従来技術と新たな低温精製技術で相対比較した結果、CAPEXとOPEXは70%程度、CO2排出量は90%以上削減できる見通しを得た。
この結果から、リチウム精製に係る対環境負荷の低減のみならず、リチウム価格の低下にも期待できる。溶融条件のさらなる最適化により、いっそうの省エネ・CO2削減が期待できるため、本共同研究を通じて、事業規模のプラント設計に資する工学データを蓄積し、早期の社会実装を目指す。