2022年03月03日 19:00

国立科学博物館の吉川夏彦さんらは、紀伊半島から北陸・中部地方にかけての本州中部に分布するハコネサンショウウオ属の未記載種について、既知種との遺伝的・形態的な比較を実施した。
その結果、近畿型は外部形態では同属の近縁種に非常によく似ていたが、背面に赤色~ピンク色の鮮やかな斑紋をもつこと。また、腹面に多数の細かい白点をもつことが大きな特徴であることが判明し、一部の集団を除いて他種と識別可能であることがわかった。
分子系統解析をおこなったところ、本種は同所的に分布する狭義のハコネサンショウウオ O. japonicusと明確に異なること。四国・中国山地産のシコクハコネサンショウウオ O. kinneburiに最も近縁であることを改めて確認。これをOnychodactylus pyrrhonotus Yoshikawa and Matsui, 2022 として新種記載した。炎のような美しい赤色の斑紋にちなんで、和名は「ホムラハコネサンショウウオ」を提唱している。本種は四国産の近縁種と系統的に最も近く、四国と近畿地方(紀伊半島)の生物地理学的な関連を示す例の一つと考えられる。
ハコネサンショウウオは江戸時代に最初の記載が行われた種だが、この10年間の再検討によって、実は7種に分かれていることが明らかになった。本種は、その最新の発見になる。本研究成果は、2022年2月出版の爬虫両生類学の国際誌「Current Herpetology」誌に掲載された。