2021年04月26日 18:39

「活字離れ」をはじめ紙書籍の需要減を背景に苦戦を強いられてきた書店業界が、ここにきて持ち直しの動きを見せている。帝国データバンクの調査では、2020年度の書店の倒産は12件にとどまった。

書店業界はこれまで、若年層を中心に本を読まない「活字(書籍)離れ」に加え、インターネット書店の台頭、電子書籍などデジタル化が脅威となって売り上げの減少を強いられ、中小書店を中心に倒産が増加傾向にあった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもりの追い風を受け、自己啓発や参考書などの教養本から、自宅で楽しめるエンターテイメントツールとしてマンガなどコミックの需要が急増した。

なかでも、昨年10月に劇場版が公開された「鬼滅の刃」が爆発的ヒットとなったことに加え、最近では人気が高まっている「呪術廻戦」といったヒットタイトルにも支えられた。「人気コミックに引っ張られて客数が増えた」など、書店によってはコミックの売上が前年から1割以上増加したケースもみられ、経営に持ち直しの動きもみられている。

総務省が行った各調査によれば、電子書籍への支出額(12カ月移動平均値)は21年1月時点で約150円となり、過去5年間で4倍に急増した。こうしたリアル書店からネットへの販売シフトは、特にオンライン販売網を強化してきた大手書店にとっては恩恵が大きく、販売増に繋がることが見込まれる。コロナ禍で「紙書籍」の魅力を再認識する動きが広まるなか、戻りつつある客足やニーズをどのように維持・拡大するか、各書店の動向が注目される。