2025年07月25日 20:09

福井大学、大阪大学の研究グループは、順天堂大学、東京科学大学との共同研究により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による血管損傷を効果的に抑制する新たな治療標的を発見した。

COVID-19では、肺炎などの呼吸器症状に加えて、全身の血管炎や血管損傷が引き起こされることが知られている。血管内皮細胞の機能障害は、血管透過性の亢進、血栓形成の活性化、炎症細胞の血管外遊出を引き起こし、多臓器不全や長期後遺症の原因となる。本研究では、生体内の脂質メディエーターであるリゾホスファチジン酸(LPA)による血管保護作用が治療に有効であることを、世界で初めて実証した。

研究グループは、ヒト血管内皮細胞を用いた3次元血管培養システムを構築し、SARS-CoV-2感染により破綻する血管構造がLPAにより保護されることを確認。さらに、動物モデルを用いた感染実験では、LPA投与により肺組織の炎症と血管損傷が有意に改善された。そのメカニズムとして、LPAは炎症性サイトカインの産生を抑制し、血管内皮細胞間の接着を強化することが判明した。

この発見は、従来の抗ウイルス薬や抗炎症薬とは異なる治療法を提案するもの。COVID-19の重症化予防やLong COVID対策に加え、将来の新興再興ウイルス感染症に対する初期治療法としての応用が期待される。