2025年07月10日 19:00

日立は、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、低温で高出力な発電を可能にする次世代固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術を開発した。
世界的な脱炭素化の流れを受けて、再生可能エネルギーや高効率な分散電源の導入が求められている。SOFCは高効率な発電技術であり、水素やアンモニア、バイオ燃料など多様な燃料に対応できる柔軟性を持つことから、カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目されている。一方、従来のSOFCは約700℃の高温動作が必要であり、さらに長い起動時間や厚い断熱材の使用が求められるため適用範囲に課題があった。低温動作に向けて、電解質層の薄膜化が検討されているが、信頼性の低下が課題となっていた。
本技術は、半導体で培った技術を応用し、燃料電池の構造を細かく分割して管理することで各セルごとに性能を評価し、不良セルを事前に除去。これにより、全体としての故障リスクを低減し、高い信頼性を実現した。また、発電に重要な部品(電解質層)の厚みを均一に薄くすることで出力密度を向上。この結果、SOFCの動作温度を従来の約700℃から519°Cまで低下させながら、1W/cm²を超える高出力と高信頼性を両立した。
断熱材の使用削減やコスト低減が可能となり、工場の自家発電や災害時の非常用電源など、産業用分散電源や可搬型電源など幅広い用途への適用が期待される。今後、パートナー企業や補機メーカーとの協創を通じて社会実装をめざし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する。