2025年06月06日 16:24

国立科学博物館筑波実験植物園で、国内ではほとんど例のない、世界最大級のラン、グラマトフィルム・パンテリヌム(Grammatophyllum pantherinum)の開花に成功した。

グラマトフィルム・パンテリヌムは、ボルネオ島、ニューギニア島とその周辺の島々の熱帯低地林の木に着生して暮らすラン科植物。グラマトフィルム属は熱帯雨林の高木の枝(林冠)に生えるためアクセスが困難、開花がまれ、個体が大きすぎて栽培困難、といった理由でこれまで研究が遅れていた。筑波実験植物園では本属の研究を行い、分類の混乱を正すとともに、DNA情報を使い進化の道筋を明らかにした。

このたび開花した個体は2013年に栽培を開始し、12年間の技術職員の試行錯誤の結果、開花に初めて成功した。現在、草丈230cm、花茎の長さ226cm(現在伸長中でさらに伸びる)、5本の花茎にはそれぞれ約75輪の花が着いている。自生地では、草丈3~4mに成長した記録がある。この開花により謎の多い本種の生物学的特性が明らかになるため、現在、さまざまなデータを記録している。見頃は6月下旬まで。

このほか、国内でほとんど花を見ることができない巨大なラン、バンドプシス・リッソキロイデス(熱帯雨林温室)や、反対に世界最小クラスの花を着けるヨウラクラン属(水生植物温室)なども植栽されており、現在、開花中。