2025年05月26日 16:00

6月14日より、大阪歴史博物館にて特別展「正倉院 THE SHOW-感じる。いま、ここにある奇跡-」が開催される。本展では、宮内庁正倉院事務所のプロジェクトで再現された「蘭奢待(らんじゃたい)」の香りを初公開する。
「蘭奢待」の宝物名は「黄熟香(おうじゅくこう)」。長さ156.0cm、重さ11.6kg。東南アジアに分布するジンチョウゲ科アクイラリア属の木の切り株などに樹脂や精油が沈着してできた香木で、いわゆる「沈香(じんこう)」。「沈香」の中でも、正倉院の蘭奢待は特に名香とされてきた。
「蘭奢待」は、織田信長をはじめ、足利義満・義政など、その香りに魅了された時の為政者が、天皇に許可を乞い、その一部を切り取ったことで知られ、「天下第一の名香」と呼ばれてきた。謎に包まれてきたその香りについて、正倉院事務所では2024年度から、高砂香料工業の協力のもと、正倉院に以前から保管されてきた、蘭奢待の「脱落片」を使用し、成分分析などの詳しい調査を実施してきた。
「脱落片」は、幅およそ1mm、長さも数mm程度のごく小さなものだが、高砂香料の調香師が、香りを嗅ぐため加熱したところ「経験したことのない独特の香り」が立ち上ったという。成分分析の結果と、香りを嗅いだ調香師の研ぎ澄まされた感覚によって、歴史上初めて、蘭奢待の香りがよみがえった。会場には再現した香料の入ったガラス容器を設置。カバーを取って香りを楽しめる。