2025年04月30日 16:23

順天堂大学とメタジェンセラピューティクス社の研究グループは、潰瘍性大腸炎(UC)の新たな治療法として注目されている「腸内細菌叢移植療法(FMT)」について、「良いドナー」の条件とドナーと患者の相性を解明した。

潰瘍性大腸炎は、原因不明の慢性炎症性腸疾患であり、厚生労働省指定の難病。その発症には腸内免疫と腸内細菌叢のバランス異常が関係しているとされており、健康なドナーから提供される腸内細菌を移植するFMTが新たな治療選択肢として期待されている。

本研究では、2014年から実施されてきたFMTの臨床研究に参加した97例の潰瘍性大腸炎患者のデータを詳細に解析した。その結果、FMTの治療効果は患者の病勢の重症度や過去の薬剤使用歴と関連していることが明らかになった。

また、治療効果が高かったドナーには特定の有用菌種が存在しており、さらにそのドナーと患者の腸内細菌叢の構成が類似している場合、治療効果が高い傾向があることが確認された。これらの知見は、FMTによる治療のさらなる効果向上を可能にし、将来的には個々の患者に最適化された個別化医療(パーソナライズド・メディスン)への展開が期待される。

本論文は「Journal of Crohn’s and Colitis」誌に4月1日付で公開された。また、国際学会(アメリカ消化器病学会、ヨーロッパ腸炎学会、日本消化器病学会など)にて口演発表され、高い評価を受けている。