2025年03月13日 20:09

静岡大学農学部の花岡創准教授の研究グループは、静岡県農林技術研究所森林・林業研究センター、神奈川県自然環境保全センター、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センターと共同で、花粉の出ない雄性不稔スギ(通称:無花粉スギ)個体を選抜。選抜個体を「春凪(はるな)」と命名し、森林総合研究所が設置する優良品種・技術評価委員会に申請して優良品種(無花粉スギ品種)として評価された。

スギ花粉症は日本における深刻な社会問題の一つであり、花粉の出ない無花粉スギ品種の開発と普及は、花粉発生源対策として極めて有効と期待される。本研究では、雄性不稔遺伝子をホモ接合型(aa)で保有する神奈川県の田原1号と、雄性不稔遺伝子をヘテロ接合型(Aa)で保有する静岡県の大井7号の人工交配家系から、雄性不稔かつ成長や材質、通直性、さし木発根性など、林業用品種として求められる性能にも欠点がない個体を選抜した。

この家系材料は、2010年に神奈川県自然環境保全センターと静岡県森林・林業研究センターが共同で作出したものであり、静岡県森林・林業研究センターがそれらの性能を評価するための試験地を造成し、育成。2023年から、静岡大学と林木育種センターがその調査や統計解析を共同で行い、優良な1個体の選抜に至った。

春凪は、静岡県等での林業への活用のほか、既存の優良品種と交配させ、新たな無花粉スギ品種を作出するための育種素材として活用するなど、スギ花粉発生源対策に役立てていくことができる。