2024年09月02日 12:43

千葉大学の研究チームは、次世代太陽電池や発光デバイス材料としても期待されるハロゲン化金属ペロブスカイトを用いて、光で物質を冷やす「半導体光学冷却」の実証に成功した。光を使った冷却は物理的に孤立した状況にある物質でも冷却できるため、従来冷却手法とは全く異なる応用の可能性がある。
これまで半導体の光学冷却を目指した研究が数多く行われてきたが、発光効率を100%に近づけることは困難だった。ここで期待されているのが、ペロブスカイトの量子ドット。研究チームは、丈夫で高い発光効率が維持されるドットインクリスタルという形状のペロブスカイトに注目し、研究を行った。
半導体に光を照射すると、電子と正孔のペアである励起子が生成され、励起子が再結合するときに発光が起きる。一方で、励起子の密度が高くなると、発光せずに熱を放出して再結合する過程が現れ、これをオージェ再結合という。半導体量子ドットでは、オージェ再結合が起きるため、強い光強度によって光冷却ではなく、光加熱が生じてしまう。研究では、光学冷却にはオージェ再結合によって決まる限界があることを示し、励起光強度に依存して冷却から加熱へと移り変わることを予測・実証した。
より低温への光学冷却を実現するには、量子ドットの密度を上げること、オージェ再結合を起こらないようにすることが必要。今後は、量子ドットの周囲の物質を工夫することでオージェ再結合の確率を減らす試みが必要となる。