2023年05月30日 12:02

順天堂大学大学院医学研究科神経学の服部信孝教授らの共同研究グループは、パーキンソン病等の患者さんの血清から、「α-シヌクレインシード」を検出することに成功した。これは、正常型α-シヌクレインタンパク質を凝集させる種となる、病的な構造をもつ凝集体。さらに研究グループは、血清に存在するα-シヌクレインシードは、疾患ごとに構造や性質が異なり、疾患の鑑別に有用であることを世界で初めて明らかにした。

パーキンソン病やレビー小体型認知症、パーキンソン症候群である多系統萎縮症では、脳及び全身に、α-シヌクレインというタンパク質の凝集体が病的に出現。神経細胞死を引き起こすことが知られている。これらの疾患は、凝集しやすい異常構造型α-シヌクレインが脳に蓄積し神経細胞が脱落する疾患で、α-シヌクレイノパチーと総称される。

今回、研究グループは、α-シヌクレイノパチー患者の血液中に存在するα-シヌクレインシードが、α-シヌクレイノパチーの診断と鑑別のマーカーとして有用であることを世界で初めて明らかにした。この発見から、病気の進行に血液中のα-シヌクレインシードも関与していることが考えられた。

今後は疾患ごとに異なるα-シヌクレインシードの構造の違いを利用し、血液を用いた簡便かつ有用な診断方法を確立することを目指す。さらに、疾患ごとに凝集体の構造が異なる理由を解明することで、病態解明や疾患修飾療法開発への端緒になることも期待できる。