2023年05月29日 15:57

キヤノンは、次世代量子ドットディスプレイに適用可能な材料として、ペロブスカイト構造を持つ量子ドットインク(ペロブスカイト量子ドットインク)を開発。実用可能な耐久性を、世界で初めて実証した。

量子ドットは、高輝度で高い色純度の光を発光することのできる、直径数ナノメートルの半導体微粒子。量子ドットを用いたディスプレイは色域が広く、表現力が高いとして注目されている。キヤノンはペロブスカイト量子ドットインクに注目し、開発を進めてきた。ペロブスカイト量子ドットは、色純度と光の利用効率がともに高く、高輝度・広色域・高解像度を兼ね備えたディスプレイを実現できることが期待されている。しかし、実用化に向けては耐久性の低さが課題となっていた。

そこでキヤノンは、プリンターのインクやトナーの開発を通して培ってきた技術を応用し、独自の手法でペロブスカイト量子ドットに保護層を形成。それにより、色純度と光利用効率を保持したまま、実用可能な耐久性を実証したペロブスカイト量子ドットインクを開発した。

InP量子ドットインクでは、ITU-R BT.2020の色域の88%をカバーしているのに対し、キヤノンのペロブスカイト量子ドットインクは94%をカバーすることが可能。また光の利用効率が高いため、消費電力を約2割、削減することができると見込んでいる。本インクを用いることで、将来的にはこれまでは実現できなかった、量子ドットを用いた8Kなどの超高精細な有機ELディスプレイが実現できる可能性がある。