2022年12月21日 12:24

岡山大学資源植物科学研究所の久野裕准教授の研究グループでは、遺伝子改変技術を用いて、オオムギの重要な遺伝子の機能証明や、農業特性の改良を進めている。

オオムギの遺伝子組換えやゲノム編集は品種によって成功率に差があり、ほとんどの品種では達成できない。同グループでは、その理由を知るための遺伝学的な実験を行い、オオムギの「遺伝子改変に成功するために必要なゲノム領域」の同定を試みた。研究の結果、7本あるオオムギの染色体のうち2番染色体と3番染色体の中に、その必要領域が3カ所あることを発見。現在はいくつかの遺伝子の違いが組織培養の効率を支配していることがわかってきており、例えばオオムギのカルス(細胞の塊)の増殖に寄与する遺伝子の存在を明らかにしている。

一方で、ゲノム編集技術のひとつである CRISPR/Cas9法を用いたオオムギ遺伝子の精密改変を行っている。これまでに、種子休眠の長短を決める遺伝子の改変に成功し、オオムギの発芽の調節に成功した。また、オオムギの環境応答遺伝子の改変、ミネラル輸送に関する遺伝子の機能証明、デンプンを蓄積する細胞小器官の蛍光可視化などにも成功している。

オオムギは、食用、醸造用、家畜飼料用など、多くの用途で利用される重要な作物のひとつ。これらの成果は、環境変動に耐性を持つ作物や高品質な品種の開発に貢献する。なお今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を11月30日に発行した。詳しくはこちら