2022年03月14日 16:13

三菱総研DCSは中島合金とともに、熟練技能者の暗黙知を学習させたAIが実業務に適用可能か検証するため、純銅鋳造の製造工程をファーストケースに選定、実証実験を行った。

純銅鋳物にはCAC100番台のJIS規格が定められており、品質を一定水準に揃える必要がある。そのためには、品質に影響する主要な制御因子を把握し、その最適条件を定め、製造時にはできる限りその条件値に近づくようにしなければならない。しかし実際は、種々の制約から製造者が制御できない因子も存在するため、これらの因子についてはばらつきを抑えることができない。

中島合金はこの抑え込めないばらつきを測定し、その値に応じて調整用の添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化する熟練の技能を持っている。しかしこの技能の継承には、人伝いによる多くの手間と長い時間がかかるという課題があった。そこで中島合金とDCSは、この課題解決のためAI技術を活用した検証に着手した。

実験では実際に純銅鋳造を行い、添加剤の投入量に関してAIの予測と熟練者の判断を比較した。その結果、AIの予測値は全14回の製造中13回で採用され、いずれの回もJIS規格を無事達成。導電率の実現値と理想値との絶対誤差も熟練者と同等水準の結果となり、実務でも十分に活用できる水準と考えられる。

今回得られた気付きをもとに、データサイエンスの専門家がいない顧客でも、現場技術者が自ら学習処理が行えるようUX面を中心に改良を続け、学習支援機能の強化を進めていく。