2022年01月12日 15:52

千葉大学大学院薬学研究院 中島誠也 助教及び根本哲宏 教授は、バーチャルシミュレーション主導による天然成分の人工合成に世界で初めて成功した。
レスベラトロールは、いわゆる赤ワインのポリフェノール成分。これまで、様々な化学者によって、レスベラトロールダイマーが自然界から抽出され、その化学構造が決定されてきた。しかしながら、自然界でどのような化学変換によってそれらの成分が生成しているか、その生合成経路はブラックボックスだった。植物の中で起こる化学反応を観察したり、証明したりすることは容易ではない。
そこで近年ではコンピュータ計算、特にDFT計算と呼ばれる方法で、植物内での生合成経路がシミュレーションされている。同研究グループはこれまでブラックボックスであった、様々なレスベラトロールダイマーの生合成経路を網羅的に明らかにすべく、DFT計算によってバーチャルシミュレーションを行った。
本研究成果により、バーチャルシミュレーションが天然成分の生合成経路の解明や構造の証明に重大な役割を果たすことが示された。今後、バーチャルシミュレーションの活用により、通常の実験のみで行うよりも短期間で、効率的に様々な天然成分の人工合成が行われ、創薬研究等への応用研究へと展開されることが期待される。この研究成果は、2022年1月10日にネイチャー・リサーチ社のオープンアクセス学術誌である「Nature Communications」に掲載された。