2021年04月30日 17:32

東京大学大学院農学生命科学研究科・矢守航准教授らの共同研究により、地球温暖化に適応した生産性の高いイネを作り出すことに成功。近未来に予想される温暖化環境において、高い生産性を示す作物の育成に貢献することが期待されている。

近年の温暖化による地球規模の環境劣化や開発途上地域での爆発的な人口増加などにより、食糧の安定供給は人類にとって最も重要な課題と言える。作物の生産性は、葉で行われる光合成能力と密接に関連。地球の年平均気温が1℃上昇するごとに世界のイネの収量は17%減少すると報告されており、これには高温による光合成能力の低下が関与していると考えられる。

今回の発表によると、光合成のCO2固定酵素であるルビスコと、ルビスコの活性化を促進する酵素であるルビスコアクチベースを増強した二重形質転換体イネを新たに作出。野生型イネと比較して、高温環境における光合成速度を約20%、最終的な植物体重量を約26%向上させることに成功した。

高温耐性品種および新たな栽培技術によって、温暖化に伴って生じる高温や気象変動リスクによる減収および品質低下を回避することができれば、経済効果は約900億円程度に上ると試算。今後、近未来に到来する温暖化環境において光合成が抑制されるメカニズムの全貌を解明し、全ての抑制を解除すれば、光合成効率の改善のみならず植物のバイオマス生産量確保のための技術開発につながる。また、食料増産や地球レベルの大気中CO2濃度の削減にも貢献できると期待されている。