2021年01月05日 17:18

順天堂大学大学院医学研究科 器官・細胞生理学の小松雅明 教授、蔭山俊 助教らの研究グループは、肝臓がんや神経変性疾患病変部で確認されるたんぱく質p62顆粒の機能を解明した。

本研究により、機能のない凝集体と考えられてきたp62顆粒が、オートファゴソーム形成や酸化ストレス応答を活性化する非膜型細胞小器官であること、選択的オートファジーによるp62液滴分解の阻害が抗酸化ストレス応答を異常亢進(高い度合いに進行)させることが明らかにされた。本研究は、Nature Publishing Groupの「Nature Communications」オンライン版に2021年1月4日付で公開された。

この研究成果は、古くから知られる癌や神経変性疾患で確認されるp62構造体の病態生理学的意義を再考させるだけでなく、オートファジーによる選択的基質認識機構、そしてオートファジーの新たな生理機能を示したこととなる。

どのような分子が相分離しオートファジーの選択的基質となるのか、それら選択基質の相分離の制御機構、相分離基質に沿ったオートファゴソーム形成機構、そしてそれらの分解の生理的意義はほとんど手つかずの状態であり、これらを解明することが求められていた。今回の結果はオートファジーによる選択的な液滴分解の生理機能をマウス個体で示した初めての成果であり、オートファジーや液滴の異常が関与する様々な疾患の発症メカニズムの解明につながる可能性が期待される。