2020年01月20日 16:09

電力中央研究所原子力技術研究所 放射線安全研究センターの藤通有希主任研究員、大塚健介上席研究員、冨田雅典上席研究員、岩崎利泰センター長のグループは、マウスの小腸幹細胞から、小腸と類似した構造を持つミニ小腸(オルガノイド)を作製する手法の高効率化を達成した。

またこの手法を用いて、蛍光色の違いから幹細胞の由来を識別できる混合オルガノイドを安定して作製する技術を確立した。さらにこの技術を用い、放射線を照射した幹細胞と非照射の幹細胞から混合オルガノイドを作製した結果、放射線照射幹細胞の増殖が抑制される放射線誘発幹細胞競合を捉えることに成功した。

本研究成果は、幹細胞集団内に放射線がヒットした幹細胞とヒットしていない無傷の幹細胞が混在する低線量率被ばくの場合、無傷の幹細胞が優先的に増殖することにより、幹細胞集団を健全な状況に近づける可能性を示している。

今後、放射線誘発幹細胞競合が生じる線量・線量率の範囲を明らかにすることにより、低線量率放射線を生涯にわたって被ばくする高自然放射線地域住民の疫学調査で報告された、低線量率被ばくでは発がんリスクが上がらないという結果の理解につながると考えられる。本研究成果は、2019年12月30日付で英国科学誌Scientific Reportsに掲載された。