2024年07月25日 16:10

熊本大学 発生医学研究所の古賀沙緒里助教及び小川峰太郎教授のグループは、造血幹細胞の前駆細胞である血管内皮細胞から、造血幹細胞を試験管内で分化誘導することに成功した。
これまで、血管内皮細胞から造血幹細胞を試験管内で分化させるためには、人工的に遺伝子を改変した支持細胞との共培養や血清存在下での培養が必要だった。本研究では、誰でも利用できる材料のみを使用した血清フリーの培養法の構築を目指した。市販されている一般的な血管内皮細胞株を支持細胞として使用。SCF (ステムセルファクター) とTPO (トロンボポエチン) のみを添加することで、造血幹細胞を分化誘導することに成功した。
造血幹細胞は、胎生期に血管内皮細胞からプレ造血幹細胞を経て発生する。血管内皮細胞からプレ造血幹細胞への分化は大動脈の内腔で起こるが、本研究でこの環境に存在する血管内皮とそこから産生されるSCFがこの分化過程に寄与していることが分かった。また、プレ造血幹細胞から造血幹細胞への分化にはSCFとTPOが必要であり、プレ造血幹細胞がこれらの因子を受け取るためには肝臓への移行が必要であることも明らかにした。
本研究により構築した培養法は、血管内皮細胞から造血幹細胞が発生する過程に必要な環境を再現しており、造血幹細胞発生の詳細なメカニズムを解明できる強力な研究ツールになる。将来的にはES細胞やiPS細胞からの造血幹細胞誘導につながることが期待される。