2023年07月20日 18:53

産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは、ポリシロキサンと天然物由来のバイオポリマーを複合した多孔体(エアロゲル)の製造法を新規に開発した。

将来の住宅や車などには、軽くて変形・加工しやすく、光を通すが熱を通さない透光型の断熱材が必要とされる。また高度に集積が進む電子機器では、既存の材料より熱伝導率の低い断熱材が欠かせない。

次世代の断熱材の有力候補がエアロゲル。エアロゲルとは、約90%を超える高い空隙率で、数十ナノメートルの空孔をもつ多孔体。超軽量、低熱伝導率、低光散乱(透明)、独特なナノ空間などの特性を示す。これらの特性を生かした断熱材を筆頭に、CO2吸着材や触媒担体など、カーボンニュートラルに貢献する機能材料として注目されている。

産総研では、天然資源を主原料とするエアロゲルの開発に取り組み、バイオポリマーのキトサンを用いたエアロゲルと透明で柔軟な断熱材を開発してきた。この材料は耐湿性に課題を抱えており、現在まで技術移転には至っていない。そこで、疎水性のポリシロキサンとバイオポリマーとの複合化に着目。安価な水溶性バイオポリマーとポリシロキサンとの均質な複合エアロゲルを実現する手法を開発した。

今後は、透明な複合体が得られたバイオポリマーと得られなかったポリマーとの違いを決める要因を追究。また、より産業応用に適した製造法を模索するとともに、断熱材や吸着材としての性能の評価に取り組む。