2025年08月07日 12:38

千葉大学の研究チームは、このたび磁石の表面上で孤立した量子スピンの作製に成功した。
同チームは、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、パソコンやスマートフォンなどで磁気情報の書き込みを実現するために欠かせないデバイス「MgO/Fe積層薄膜」の表面観察を実施した。その結果、このMgO/Fe積層薄膜の上に、電子が持つ小さな磁石のような性質である「量子スピン」を、 孤立した1個の状態で安定的に実現できることを、世界で初めて実証した。
この成果は、孤立した量子スピンが、将来的に量子センサーや量子コンピューターといった次世代量子技術において、量子情報を担う最小単位である「量子ビット(qubit)」として中核的な役割を果たし得ることを示唆するもの。
さらに注目すべきは、この量子スピンがすでに広く実用化されているスピントロニクス素子(磁気情報デバイス)と同じ、真空中での薄膜形成技術(真空製膜法)によって作製可能であった点。
つまり、現在の技術基盤をそのまま応用できるため、量子デバイスへの応用展開も非常に現実的であり、今後の発展が大いに期待される。さらに、単一の磁性原子におけるスピン遷移を利用した「単原子触媒」の開発といった、量子スピン工学の多方面への展開が期待される。