2023年09月20日 15:53

山と溪谷社より、ヤマケイ文庫「登山史の森へ(遠藤甲太:著)」が、9月20日に刊行された。カモシカ山行の由来とは。沢と谷とはどう違うのか。日本でザイルが初めて使われたのはいつか。初登頂前夜の一ノ倉沢の状況。「単独行」に登場する加藤文太郎の友達とは。松濤明「風雪のビヴァーク」秘話など、本書は「正統登山史」には登場しない登山史の裏側を、丹念な調査で読み解いた一冊。

解説によると、「山の雑誌や山岳部・山岳会の会報、山岳書を隅々まで読みながら、歴史を構成する要素となりそうな事項を一件ごとカードにとる。…この作業を何年も重ねて、何千何万と集めたカードを、ある視点から整理する。遠藤が定めた視点は「正統登山史年表」で、それによって取りあげられぬもの、つまり「落としもの」が生じた。その「落としもの」たちに着目し、根掘り葉掘り、尾鰭を加えた物語化は、遠藤の並ならぬ好奇心・詮索好き・凝り性が成せる業に依る。」という。

また、知られざるソロクライマーを描いた「失われた記録――立田實の生涯」のほか、「岩と雪」に掲載され話題を呼んだ「山――陶酔と失墜」を特別収録。定価1650円(税込)。なお、瑞牆山、白馬岳、剱岳源次郎尾根について、命名の由来を探った「『山名・地名』」異聞抄」の試し読みはこちら